最後のあんパン 230329

パン

今日はあんパンを作ります。

私が料理を作ることが好きになったのは小学生の頃です。

食い意地が張っていたのか、料理番組を見るのが大好きでした。

そんな私に、母が1冊の分厚い料理本を買ってきてくれたのです。番組は見られる時間が限られますが、本はいつでも好きなときに好きなだけ眺められるので、夢中で見ていました。

そのうちに作れそうな物から少しずつ作り始めると、それを食べた家族が「おいしい」と言って喜んでくれたのです。小学生ですし、材料も限られていて、今思えば多分それほどでもなかったとは思うのですが、日頃から不器用で何をやってもうまくいかなくて叱られてばかりの子供だったので、そうやって喜んでもらえたり、小学生にしては上手だと褒めてもらえたことがとても嬉しかったのです。親から褒められたのはおそらく唯一料理だけだったと思います。

それでも母からは、口に合わないと結構厳しい評価をもらったのですが、父はどんな失敗作でも、必ず「おいしい」と言って食べてくれました。

そんな父が大好きだったのがあんパンです。

大人になって、お菓子やパンを作るようになり、その度に父や母に試食してもらいました。
パン作りはとても難しく、父の好物のあんパンにも果敢にチャレンジしてみたのですが、あんこが多すぎてはみ出たり、パンがよく膨らまなくてカチカチになってしまうことがありました。
そんな失敗作でも、父はいつも「おいしい」と言って喜んで食べてくれて、「何でも引き取るからどんどん持ってきて」と言ってくれました。

最近ではあんパン作りにもなんとか慣れてきて、失敗も少なくなったので、中身をちょっとアレンジして、バナナやクリームチーズを合わせて焼くことが多く、純粋なあんパンはしばらく作っていませんでした。

今日は、あんこのみのあんパンを、まずくてもおいしいと言って嬉しそうに食べてくれた父へ、ありったけの感謝を込めて焼いてみます。

パンの生地は、いつものちぎりパンの生地です。若干砂糖を増やしました。
あんこは、通常袋に入った粒あんを使っているのですが、あいにく今日は切らしていたので、缶詰のあんこを使いました。袋入りの物より水分が多めなので、缶から出して火にかけて水分を飛ばし、パン生地で包める程度の固さにしました。
あんこは、詰めすぎると溢れだしてしまうので、ちょっと少なめにします。

発酵時間、焼く温度もいつものちぎりパンと同じです。

焼き上がりです。

焼き色も程よく、柔らかく焼き上げる事ができました。あんこもはみ出していません。

いつもはここで試食するのですが、これは、父のためだけに焼いたパンなので、試食はしません。

美味しいかどうかちょっと不安ではありますが、父にあげる最後のパンです。父には、誰にも遠慮なく思う存分食べてもらいたいと思います。

とはいえどんな出来具合か気になるところですが、父のことなので、おそらく多少まずくても「おいしい」と言って全部食べてくれると思います。

直接感想を聞くことは出来なくなってしまいましたが、またいつか、どこかで会えたら

「あのあんパンどうだった?」

と聞いてみたいと思います。

そして、「おいしかった。よく作ったな。パン屋さんになれるんじゃないの?」と言って褒めてもらいたいです。

その時を楽しみにして、このパンを父に捧げます。

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